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Essential Dementia Care Guide 19 ユニットケアに関する基礎知識 Ⅰ

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かつて、日本では認知症を含めた施設利用者の住環境に関しての意識は低かった。戦後の必要から生じた収容主義から、病院をモデルにした多床室のケアへ、そして人々の暮らしの変化とケアに関わる思想の変化とその要請によりグループケアを経て、そして2000年初頭にユニットケアが誕生した。ただし、ハード面では大きな進歩が見られたものの、実際のケアは従来と変わらず集団的・画一的であるという指摘もあり、『個別ケア』の実践には未だ程遠いといった現実がある。

ユニットケアの理念・法的根拠

特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 (平成十一年三月三十一日厚生省令第四十六号) 最終改正:平成二八年二月五日厚生労働省令第一四号

第三十三条(基本方針)

ユニット型特別養護老人ホームは、入居者一人一人の意思及び人格を尊重し、入居者へのサービスの提供に関する計画に基づき、その居宅における生活への復帰を念頭に置いて、入居前の居宅における生活と入居後の生活が連続したものとなるよう配慮しながら、各ユニットにおいて入居者が相互に社会的関係を築き、自律的な日常生活を営むことを支援しなければならない。

第三章 ユニット型特別養護老人ホームの基本方針並びに設備及び運営に関する基準

 

ちなみに、従来型特養の基本方針は以下のように記されている。

第二条  (基本方針)

特別養護老人ホームは、入所者の処遇に関する計画に基づき、可能な限り、居宅における生活への復帰を念頭に置いて、入浴、排せつ、食事等の介護、相談及び援助、社会生活上の便宜の供与その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることを目指すものでなければならない。

第二章 基本方針並びに人員、設備及び運営に関する基準

 

実にここに大きな違いがある。従来型はその利用者を“入所者”と呼び、ユニット型はその利用者を“入居者”と呼ぶ。つまり、ユニット型はその利用者によって“家”であり、従来型はその利用者にとって“家ではない”ということだ。

“入居前の居宅における生活と入居後の生活が連続したもの”になるとは、つまり、“引越し”であり、その利用者は“自分の心身に応じ”、自分が生きていくに生活のしやすい家を選択したというストーリーがそこにある。またその目的はあくまで“自律した日常生活”を継続することにあり、従来型の言う“世話”を受けに来るわけではない。

また、わたしたちにとっても、“世話”をするのではなく、ひとりひとりの生活習慣や好みを尊重し、“今までの暮しが“継続”できるように“支援”することがその仕事となる。

“今までの暮しが継続できる”こととは、つまり、“介護が必要な状態になっても、ごく普通の生活を営むことができる”ことであり、それこそが、バンク・ミケルセンの言う“ノーマライゼーション”の思想と言える。

  • 入居: そこにはいって居住すること。
  • 入所 :所と名のつくところに所員としてはいること、 若しくは、入って生活すること。

 

ユニット型施設の基本的な構造・考え方

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この段階的に外へ向かう空間構造は、わたしたちが“個人生活”を営む上で、社会とどういった段階を経てつながっているのか?を建物へ還元した考え方である。

入居者が、ひとりひとりの個性と生活リズムを個室の中で育みながら、ユニット内で気の合う幾人かの隣接した入居者とセミプライベートスペースで馴染みの関係を形成し(“入居者が相互に社会的関係を築く”こと)、その上でセミパブリックスペースやパブリックスペースといった公共性の高い共用空間でさらに大きめの人の輪の中で次第になじみの関係を作り上げていくというプロセスを作り上げている。

1ユニットあたりの入居者は10名以下とし、それを1軒の“家”ととらえる。家として考えるとき、最低限、そのユニットには、

・玄関 ・居室(個室)

・リビング ・キッチン

・浴室 ・トイレ・洗面台(居室内に整備されているコトが望ましい)

・洗濯場

を備えている必要がある。また、リビングが入居者にとって“くつろぎと交流の場”であるのなら、そこにはソファーやテレビ、椅子、テーブル、、、茶器に新聞 等、隣接するキッチンには、冷蔵庫や炊飯器が設置されていて当然である。

個室でなくてはならない理由

当初、当然のことながら、施設は『相部屋が望ましいのか?』、『個室が望ましいのか?』という論争は行われていた。論点は日本と欧米諸国の文化的な差異だ。しかし、その論争を終結させる調査報告が提出される。

財)医療経済研究機構が実施した『介護保険施設における個室化とユニットケア に関する研究』(外山 義)によれば、

6人部屋の特別養護老人ホームにおいて入所者がとる行動を調査したところ、日中の12時間の間に入所者同士の会話が全くない部屋が全体の3分の1あった。また、窓側、中央、廊下側のベッドにいる入所者は日中の80%以上、90%以上、70%の割合で、同室者に対し背を向けた姿勢を取っていることが分かった。このことから、多床室の入所者は互いに交流するどころか、むしろ関わりを避けて生活していることが明らかになった。

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(図は研究報告のものを少しだけ見やすく書き換え。)

とされている。つまり、施設利用者はプライバシーを求めていたというコトである。この研究が裏付けとなり、グループホームの導入やユニットケアへ政策が転換されることになった。また、同研究によれば、

居室の個室化とは、入居者にとっての身の置き所を保障し、一人になる逃げ場(自分を取り戻せる空間)を保障することを通して、他者と交流する意欲がわいてくることを促すところにポイントがあるといえる。コミュニケーションや交流とは相手を選択することから始まるのである。すなわち、高齢者施設の居室スペースを個室化することは、孤立・孤独の心配とは全く裏腹に、むしろ、人と交流する意欲を回復するためであると言うことが出来る。

とも述べられている。つまり、プライバシーが保たれることで、好きなときに一人になれ、また、好きなときに仲間といることができる。交流する場所、相手を選ぶこと、これが自律(自律)を取り戻す第1歩となり、また、その選択が可能であるからこそ、生活にメリハリが生まれたり、他者との多様な関係性が生まれてくるという考え方がここで示された。

1ユニットが10名以下でならない理由

個別ケアを行うコトは“しっかりアセスメントをとり”、“生活をモニタリングし続ける”ことで、多床室でも可能ではある。しかしながら、介護者1名あたりの記憶することのできる情報量、提供することのできるサービス量には限界がある。故に、一律、一斉の集団ケアであった時代には、個人のニーズや生活に焦点をあてるということ自体が難しいことだったという背景がある。10名という限られた単位に対し、職員が固定配置されるコトで、入居者と職員が馴染みの関係を築くことができ、また、その関わりの中でこそ、そのヒトを深く知ることができるという考え方による。

参考文献・引用文献 

  • 認知症介護実践者研修資料
  • ユニットリーダー研修ハンドブック

 

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