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Essential Dementia Care Guide 11 Dive into the world of dementia 認知症のヒトの内的体験を知る Ⅱ

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これは精神科医と認知症患者との間に行われたスクリーニングの場面。それは基本的に何の説明なく突然行われているに等しい。これから紹介する散文は心理学者トム・キットウッドが彼らと接する中で想像された内的世界が描かれている。

霧が渦巻く薄暗がりの中にひとり、 あなたは見覚えのある場所を彷徨っています。 でも、ここがどこだかわかりません。 今が夏か冬か、昼か夜かさえも。 ただときどき霧が晴れ、はっきりとわかることもあります。

しかし、すぐにまた霧が立ちこめて、 頭は鈍くもうろうとして、 わかったことは消え失せ、 ふたたび混乱の渦の中に巻き込まれてしまいます。

あなたかが霧の中で彷徨っているいる間、 話をしながらそばを通り過ぎていく人々がいます。 とてもてきぱきと仕事をしているように見えますが、 何をしているのかはわかりません。 話の端々から察すると、どうやらあなたのコトを話しているようです。

あなたが知っている顔を見つけ、近寄ろうとしても すぐに消えてしまうか、悪魔に変わってしまいます。 あなたは戸惑い、孤独を感じ、混乱し、恐怖に襲われます。

こんな恐ろしい状況で、 あなたは下の抑えが効かなくなってしまいます。 そして、 それを汚く感じ、罪を感じ、恥ずかしさに襲われます。 これがあなたなのでしょうか。 もう、自分が誰であるかさえもわかりません。

次に尋問が始まります。 知らないヒトがあなたへ、 理解できない奇妙なコトを表情なく指示します。 例えば、 百から逆に数えさせたり、 もしもあなたが50歳以上なら頭に手を、 といった具合です。 決してこれらの質問の目的や結果は知らされません。 もしも、その目的を教えてくれれば、 そして真剣に導いてくれるなら、 あなたは進んで手伝い、協力したいと思うはずです。

これが現状です。 すべてがバラバラで、不完全で、何の意味もありません。 しかし、もっと悪いコトは、 いつもはこうではないとあなたはわかっていることです。 ここがどこで、自分が誰だかわかるとき、 他人に親しみを感じるとき うまく物事ができるとき 霧と暗闇の中でも懐かしい記憶が蘇るのです。 しかし、今やすべてのコトは破壊され、 取り返しのつかないほどに傷つけられ、 混沌の中に取り残され、 絶望的な喪失を感じています。

かつてあなたは価値のあるヒトでした。 でも今は誰でもなく、何の役にも立ちません。 ときとして 憂鬱は剥き出しの恐怖に変わります。 それは振り返られもせず、 永遠に見捨てられ、 存在が否定されるコトを意味しているのです。

 

認知症のパーソンセンタードケア
トム・キットウッド著/高橋誠一訳(一部改訳)

 

トム・キッドウッド(Tom Kitwood 1937-1998)

認知症介護の理念としてパーソン・センタード・ケア(Person Centred Care)を提唱したイギリスの心理学者。

パーソン・センタード・ケア(Person Centred Care)

パーソンセンタードケアとは、直訳すると「人を中心としたケア」となるが、認知症という病気ではなく、よりそのヒト個人の主観的世界、その価値、意味を大切にするコトで、その人がどのように感じ、何を求めているのか理解した上で、“その人らしい”暮らしを支えようという取り組み。パーソンセンタードケアの“パーソン”には、認知症のヒトだけでなく、家族、ケアに携わるスタッフ、地域住民等も含まれ、そのすべてのヒトの“パーソンフッド(Personhood)”を高め、また、そのヒト自身が“自分は周囲のヒトにとって大事な存在”、“大切に思われている”と感じられるコトが重要なのだとされている。

参考文献・引用文献 認知症介護実践者研修資料・社会福祉学習双書2015
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