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“artext.design”はただのブログです。 一見、何の変哲もない静かなブログですが、 いつでも野望は100万PV。 私は文で呼吸したい。


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或る老人

或る老人 運転免許を手放さない

その老人は施設(有料老人ホーム)に入居させられる(捨てられる)その日まで運転免許を手放さなかった。聞けば、つい最近まで家族の目を盗み車を運転していたのだという。恐ろしい話だ。

或る老人 正気を保つ理由

その老人は四肢が動かない。動かなくなってしまったのはごく最近。仕事中に頚椎を損傷してから。最近といっても、2年以上前に遡る。その頃と今を比較して変わるところはない。そして、その状態の中で正気を保っている。

或る老人 尿瓶最適化

介護の仕事について数年。尿器(いわゆる尿瓶)を使う老人は多かったが、失敗せずにそれを使用できるヒトは極めて少ない。

或る老人 親の心のみが残る 罪と罰

その老人が初めて施設の利用をしたのは、その介護者が亡くなったことが直接的な理由だが、生きていたとしてもどのみち利用することが決まっていた。その介護者から虐待を受けていたのだ。

或る老人 理想と現実の狭間で

その老人は家族の世話になるくらいならと施設の入居を決めていた。すでにその奥方は逝去している。施設で亡くなったのだと言う。その施設の彼は何を見ていたのだろう。決めるだけの何かがあったのだろうか?それは彼の口から語られることはない。

或る老人 恋に生きた男の末路

その老人は施設に入るまで、厳格な父親ではあったが、職人らしいきっぷの良さと優しさを兼ね備えた、善き日本人的日本人であった。妻を大事にし、子も大事にする。完璧な父親。それが認知症を発症し色濃く残ったものは色欲。なんと哀れなことだろう。

或る老人 悪夢の中に生きる

その老人は優しい。ヒトへの気遣い、感謝を忘れない。身体能力は高く自分コトは自分でほとんどの場合できる。それでも介護度がついている。その全ては認知症によるものだ。しかし、その認知症の部分は他者にほとんど迷惑をかけることはない。もちろん、結果…

或る老人 サスペンス世界に住む

或る老人は突然立ち上がり叫ぶ。『あいつが犯人だ!あいつが息子を畑に埋めて、今度は邪魔になった私をこんな所に棄てようとしている。』と。

或る老人 未だ発達段階にあり

その老人は未だ発達段階にある。介護度はついてはいるものの認知症でもなく、また身体的な欠陥があるわけでもない。その老人には知的障害があった。それが年を経て老人になり、障害が介護度という尺度に入れ替わったと言うわけだ。

或る老人 最高の肉体と思想を持った廃人

その老人はある日スーツを着てやってきた。細身で長身。優しそうな面持ち、何より顔に品がある。手を引かれてはいたが、歩き方もスマートでその雰囲気はまるで面会者のよう、むしろ付き添っている奥様の方が施設に相応しく見える。しかしながら、現実的には…

或る老人 適切な介護を受けるために必死な老人 演技派

その老人は線が細い。もともと施設にいる老人は小さい方が多いが、群を抜いて小さく、そして細い。吹けば飛びそうで、デコピン一発で腰骨が折れてしまいそうなくらいである。

或る老人 適切な介護を受けるために必死な老人 賄賂

その老人はどうすれば人が自分の為に動いてくれるか?ということに試行錯誤する人生を送ってきた。故に人への贈り物は欠かさず、時には金銭を握らせる。自分がその集団の中で王様である為に、また、自分の座を脅かす者にも敏感で、その芽を摘むために手段を…

或る老人 忘却は幸せか?

その老人は極めて不幸。男運が悪く、彼女の半生はその男の借金を返済し子を育てるだけにあった。良い子に育ったはずの子の一人は順風満帆な人生から一転して転落の上今でも行方知れず、幸せな結婚をしたはずの娘はその後程なくして亡くなった。

或る老人 私宅監置の令嬢

その老人は手足が長くその年代の女性にしては背が高い。そして愛嬌のある顔立ちをしている。そんな人が羨ましがりそうな容姿を持つ反面、物心がつく頃には外の世界から隔てられて生きていた。裕福な家庭に生まれながらも10歳になる頃には精神を患い、当時で…

或る老人 自ら死地を決める

その老人は息子が成人してから30年もの間離れて暮らしていた。そもそも、親との同居がうまくいかない理由がここにある。高度経済成長期以降の核家族化は親子間の空白の時間を作ってしまっている。もちろん、盆暮れ正月には子は帰省するのだろうけれども、…

或る老人 親の心子知らずで子に憎まれ続けた親

長らく独居で生活していた老人がいた。夏になると短期入所の依頼が来るものの頑として利用を本人が拒絶する為に実現しなかった案件だが、今年になってついにそれが実現した。認知症がやや進んだ上に脳梗塞となり倒れ、本人にそれを拒絶する力がなくなった為…

或る老人 子に本当に捨てられてしまったその先

その老人はもともとショートステイで長らく利用している。特段、この数年、身体状態も認知症の具合も変わりはない。あるとするなら、少し気難しくなった、、、それだけ。ある日死んでしまうまでうちを利用しつつ家にいるのだろうと思っていた。本人もそう思…

或る老人 認知症になってなお嫁をいびり続ける

昔から“嫁を躾ける”という意味で姑が厳しくするというのは日本の伝統で、ただ、それは外から嫁として家に入った人間に対し、その“家”の思想を教育し、その家の一員として考え方や振る舞いが外部から見て問題がないようにするためである。ただ、それが“考えて…

或る老人 たぶん世界一幸せ

その老人は目が極めて悪く耳は聞こえない。それでいてよく喋る。以前は熱心な仏教徒であったようだがやや性格に難がある。

或る老人 三食昼寝付き、車送迎付きの姥捨て山

嘆く年寄りがいる。 「あぁ、ついに姥捨てされてしまった。私は捨てていないのに。最期まで看取ったのに。」

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